今年に入り非正規社員の雇用問題がマスコミをにぎわしている。
そこでは所謂「派遣社員」の雇用解雇が問題視されている。マスコミ言葉で「派遣切り」と言うことになる。「切る」とは穏やかではないが、マスコミの常用語としよう。問題は2つに大別される。一つは雇用期間中であるにもかかわらず中途解約したことだ。
つまり「期限の利益の喪失」を一方的にされた為に、「明日からの宿泊先がない」「アパートを借りる資金がない」ので、企業側の一方的な責任を追求するものだ。対象者のインターヴューで「所持金は3円しかない」「今月中に社宅を出て行かなくてはならないので途方にくれている」といった内容だ。ここではあくまでも当該派遣労働者は善人無垢な被害者として捉えられている。どこでも中途解約条項を入れるのが当然だが「片務的期待権」の侵害らしい。
もう一つは、派遣労働者を含む非正規労働者は、待遇、給与、雇用保障の面で正規労働者と同水準でなければならないとされている事だ。だから、派遣労働者を含む非正規労働者を大量に使用することは、今まで企業に多大な利益を生み出したのだから、この際その利益を吐き出し、非正規労働者の雇用を守るべきだという論調である。
しかし当社の例でも以前、派遣社員が何人か在籍したことがある。確かに優秀な派遣社員がいたので勧誘し、その理由を聞いたところ、「いろいろな企業を経験したい」「自分で責任を負いたくないし、自分の好きな時期に休んで旅行がしたい」「旅費を貯めて米国に留学行きたい」とあった。つまり自由な生き方を実践していたわけだ。契約も短期間だったし、被害者意識は毛頭なかった。
今回、東京のあるタクシー会社の話だが、「それでは一旗脱ごうという」訳で、窓口になっている某団体に応募を持ちかけたところ「登録している人達は、そんなノルマがあり勤務時間を長く拘束されている職場には一人も応募しません」と返事が来たそうだし、地方自治体が空室の公営住宅を優先的に受け付けても希望者は殆どなかったそうだ。「派遣村」にしても一部の政党が政治活動に利用していた。
ともあれ、昨年の12月から2月にかけて、マスコミの記事は「企業バッシング」に割かれていた。人権派の弁護士が何故か今回は立ち上がらなかったのは不思議だし、雇用の確保は企業の存続が前提にある点を欠落している。勤務時間と成果および欲求をすべて同じに捉えている。
その中で、冷静に論理的に見ていた勇気ある学者もいた。読売新聞朝刊12/25「論点」にある藤村 博之 法政大学院教授だ。氏は『企業は売上げが減ると・・・人件費も費用の一部だから当然のことながら削減の対象になる・・・1980年代までの日本企業は雇用を守ることに熱心だった。それは一時的に需要が落ち込んだとしても、1年から1年半もすれば再び需要が上向くと予想できたからである・・株式市場はアメリカ型に変えたことにより、以前は3〜5年での利益の最大化を実現すれば良かったのに、今では毎年の最大化を求められる。
これを怠れば株主代表訴訟が待っている。
非正規社員の雇用は、経営者にとって訴訟リスクを負ってまで護る対象ではない。
もう一つは非正規社員の全てが解雇されるわけではないということだ』たとえ雇用がパートや派遣でも、会社内で重要な仕事を任された人たちの立場は揺らいでいない。そこに注目すれば、企業から必要とされるよう自力で能力を高めていくことが最大の雇用保障になる。この当たり前の論理が世間に通じないのは残念なことだ。
2009年04月10日
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